プロジェクトの出発点として、私たちは、「庭」という環境に着目したいと思います。各家庭に最も近く、最もふれやすい自然環境である「庭」は、生きものと人間とが共生できる環境を考える場合の、最小の単位と言えるでしょう。
私たち生態教育センターの、「庭」への注目は、今日に始まったことではありません。私たちは、平成17年の「2005年日本国際博覧会(愛・地球博)」の地球市民村において、身近にいる16種類の生きものと、それぞれが抱える絶滅への危険性を、ゲーム式のプログラムを体験しながら学ぶことの出来る『お庭のエコロジー館』を出展しました。3万人を越える来場者に訴えたのは、ちょっとしたお庭の環境づくりや私たち自身の生活のあり方など、本当に小さな活動から「身近な絶滅」は防ぐことができる……ということ。『庭からはじまるエコロジー』プロジェクトは、すでにここから始まっていたのです。この『お庭のエコロジー館』の考え方を、より広く、より多角的に実践していこうというのが、『庭からはじまるエコロジー』プロジェクトになります。
まずその第一弾として、環境省認定エコファースト企業「積水ハウス株式会社」のご協力の元に、一般市民の方々の参加による、全国の「お庭」を生きものの生息する定点調査地と考えた、身近な生きもののデータ収集(モニタリング)プロジェクト、『お庭の生きもの調査』を行います。自分たちの暮らす家の「庭」、さらには、それを支える地域の自然生態へ関心を持ち、それを調べてみるという活動は、「自分の足元から生物多様性を考える」ことに他なりません。また、それらの調査やその結果を元に、「もっと生物多様性に貢献できる庭にするためには、どうすればいいのか?」を考えることは、小さいけれど、とても確実な、生物多様性保全のための「行動」につながっていくはずです。
今年度は、その調査方法・集計方法などを作り上げていくためのトライアル(試験的調査)を実施します。まずは、この『お庭の生きもの調査』に、ぜひご参加ください。

また、『お庭の生きもの調査』プロジェクト全体としては、以下のような構想・スケジュールでのアクションを考えています。
2009年度
●『お庭の生きもの調査』トライアル(試験的調査)の報告書の作成・配布
●本調査に向けたモニタリング・ガイド(調査方法解説書)の作成・配布
2010年度
●第1回『お庭の生きもの調査』本調査(春〜夏)
●第1回「生物多様性に配慮した庭づくりコンテスト」の実施
●「COP10」におけるモニタリング結果・コンテスト結果の発表
●第1回『お庭の生きもの調査』本調査の報告書の作成・配布
2011年度
●第2回『お庭の生きもの調査』本調査の実施(春〜冬)
●第2回「生物多様性に配慮した庭づくりコンテスト」の実施
●「生物多様性に配慮した庭づくり」ガイドブックの作成
●第2回『お庭の生きもの調査』本調査の報告書の作成・配布
※各プロジェクトの内容・時期は変更になる場合があります。
「庭」という小さな視点から始まっていくこのプロジェクトですが、「庭」の観察・調査から、より生きものがすみやすい庭づくりへ、また、「庭」単体から、「庭と庭」の結びつき、さらには周辺の緑との関係、街全体にまでを視野に入れていくなど…… 最終的な目標は、「生物多様性に配慮したまちづくり活動」につなげて行くことです。なによりもまず、身近な環境から生物多様性を考えることを大切にしていきたいと思います。
『お庭の生きもの調査』プロジェクトに、ぜひご注目ください。
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